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九州南部のタガメの集団構造の論文が公開されました。

 山間の谷間は、「迫」と呼ばれます。多くの迫はかつては水田(迫田)でしたが、今では多くの耕作が放棄されています。その迫の放棄地に水を貯めて流出抑制したり、世界的に劣化・減少しつつある湿地生態系を復元したりする場に活用したりできないか、事例を進めつつ、その技術的な方法や社会的な体制について検討を進めています。

 生態系の保全では、それぞれの放棄された迫田にどのような生物が生息していて、迫田間の集団の関係がどうなっているか現状を調べることが、再生する迫やその配置を考える上で重要です。

 タガメは、かつては水田に広く分布していた体長6センチほどの水生昆虫です。多くの生き物がすむ湿地でないと生きていけず、今ではごく一部にしか分布していません。絶滅危惧種でありその種自身が保全対象となること、タガメを守ることで他の種全体を多く含むセットを守ることにつながること、大型で個体数の調査をしやすいこと等のために、われわれは、迫田保全の指標としています。

 今回、球磨地方の迫田に残存しているいくつかの集団の特徴をDNAを用いて解析した結果が、論文として公表されました。一つの集団は、遺伝的な多様性が低いこと(たぶん、集団が小さいため)、同じ流域の中でも違う迫間では、ほとんど交流がないことが明らかになりました。これらの結果を考えると早い段階で、集団を大きくすること(個体数が増えられるように湿地の質を上げ、面積をふやすこと)、生息できる湿地間で移動できるようにすること(飛翔できる範囲に生息できる湿地があること)が必要だと考えられました。


論文情報

雑誌名: Entomological Science

論文タイトル: Discovery of a new population of the endangered giant water bug Kirkaldyia deyrolli (Heteroptera: Belostomatidae) in Kyushu and evaluation of their genetic structure

著者: Tomoya SUZUKI, Hidetaka ICHIYANAGI, Shin-ya OHBA

論文へのリンク(DOI): https://doi.org/10.1111/ens.12564


プレスリリース
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